宮部みゆき作品を全世界マーケットへ!突アポからはじまった無謀な挑戦 宮部みゆき作品を全世界マーケットへ!突アポからはじまった無謀な挑戦
STORY.5

宮部みゆき作品を全世界マーケットへ!
突アポからはじまった無謀な挑戦

インタビュアー:大舘仁志(クリーク·アンド·リバー社 2014年入社)

入社1年目、Webって何…?からのスタート。
今ではキャンペーンサイトの企画・制作、提案など幅広い案件に奮闘する日々です。

「作家エージェンシー」という仕事をご存知でしょうか? 恐らく、ご存知の方はおろか興味がある人ですら、相当に少ないのではないでしょうか?

しかし、あの宮部みゆきさんの作品を全世界50億人のマーケットへ進出させたのが、クリーク·アンド·リバー社作家エージェンシーの社員だ。

と言われたら、どうでしょう?

さすがに少し興味を持っていただけましたでしょうか?

今回の主役はその「宮部みゆき世界マーケット進出プロジェクト」を成し遂げた作家エージェントの一人、川口 比呂樹(かわぐち ひろき)さん。彼がどんな経緯でそのプロジェクトに関わり、何をどう進めていったのか。詳しく語っていただきました。

『模倣犯』が「海外で読まれていない」という事実に垣間見えた業界の苦悩

川口

宮部みゆきさんといえば、知らない人の方が少ないってくらい国内で有名な作家ですよね。僕個人も彼女の『模倣犯』の大ファンで、それこそ学生の頃から何度読んだかわからないくらいです。

でも、僕が作家エージェントとして活動し始めた当時、実はまだ『模倣犯』は海外へあまりリーチできていなかったんですよ。

川口

もちろんそこには様々な事情もあったでしょうし、一つ一つの理由は「聞けば納得」できるものでした。

でも、僕は納得出来なかったんですよね。

『こんなに素晴らしい小説を読んでいる人が、まだ日本国内にしかいないなんてそんなもったいない!』てな感じですね(笑)

既に高い人気と知名度を誇る宮部さんの作品でさえも、日本という国を一歩離れれば、多くの人は読むことすらできない。

という現状に憤りつつも、“チャンスだと思った”と語る川口さん。

宮部さんの作品でさえも海外展開できていないのが現状…、であれば、同じような悩みを抱えるクリエイターはもっと数多くいるんじゃないか?

そしてその先に、さらに大勢の『日本の素晴らしい小説を読みたいと願う海外ファン』がいるのではないか?そう考え、色々な意味でワクワクしてしまったんだとか。

コネもツテもないなら当たって砕けろ!
熱意オンリーで挑んだアポイント

川口

まだこの時、ウチの会社で作家エージェンシーが立ち上がって一年という、実績が少ない時期だったんです。

つまり話を通そうにも作家の事務所からしてみれば完全に「新規の営業さん」ですし、僕にいたっては「ただのファン」の状態。

当然コネもツテも全くありませんでした。

なので、「じゃあもう突撃するしかないか」と開き直って、いきなり直接問い合わせ ⇒ そのまま企画プレゼンしてしまいました。

川口

「この本が大好きなんです!模倣犯を電子書籍にして世界に配信しましょう!」ですからね。

いや、ほんと、よく怒られなかったなぁと思いますね。今にして思えば(苦笑)

コネもツテも何もないけれど、作品に対する強い熱意と愛は持っていたからぶつけてみた。と、少々照れくさそうに笑いながら語る川口さん。

案外「やりたいことを仕事にする人」の事業のはじめ方ってのは、大体こんな感じなのかもですね。

全くキレイではないし、見る人によっては泥臭く強引に見える。けれど、そこに揺るがない熱意があるからこそ、多くの人が賛同し、一見不可能に見えるプロジェクトを強引にでも推し進めてしまう。

なかなかマネ出来るもんじゃないですが、学びたいところですね。

海外展開体制も翻訳体制も何もかもゼロから!
全てを同時進行で進める無茶な毎日

川口

宮部さんに提案した時点では、電子書籍で海外展開するための基盤作りをゼロから行っているところだったんです。

書籍を配信する電子書店は、配信方法についてまだ準備中で、翻訳家もまだ何となくの候補でしか決まっていない状態からの話で(苦笑)

川口

そもそも難解な『模倣犯』の翻訳となれば、複数人の訳者で作業的に回す翻訳会社ではNG。

優秀な翻訳家を探し出すしかないと覚悟を決めて、約200人の著名翻訳家リストを作るところからやっていったんです。

ウチの会社のデータベースがいかに大きくとも、200人以上の、しかもある程度以上の実績を持った著名な翻訳家のリストを作るのは相当大変だったはず。

にも関わらずそれを少人数·短時間で作り上げ、総当りで連絡し、翻訳家の集まるパーティーがあればそこに赴いたりしていたとのこと。そんな甲斐あって翻訳家を(かなりスピーディーに)選出することに成功。

配信スタンドとなる電子書店の設計を進めながら、翻訳家とのやりとりを行いながら、デザイナーとの調整を行いながら…と。

さらに無茶苦茶なペースで川口さんはプロジェクトを動かしていったんだそうです。

無茶で無謀なプロジェクト推進を支えた「子供のような夢」

川口

無事に翻訳家も決まり、ようやく動き出した!

その後が本当の地獄でしたね(笑)

翻訳されて上がってきた原稿を確認して修正する。ただそれだけの作業が「原本をイチから確認 ⇒ 英語と照らしあわせて前後の流れを考察 ⇒ 修正するか否か翻訳者に相談し判断 ⇒ 修正指示」ですからね。

作業の手間と神経のすり減り具合たるや尋常じゃなかったです。

他の企業が行うエージェント業であれば、「著者とマーケットをつなげばとりあえず後はお任せ」が、当たり前と言えば当たり前。

けれど、川口さんはそうはせずに「自らの手で進行管理を行い、小説の翻訳に責任を持った」のだと言います。

もちろん、当時まだ「翻訳小説の電子書籍世界販売」というモデル自体が少なく、全てまかせられる業者がいなかったという理由もあるとは思います。

まるで出版社の編集部をたった一人で担当するかのような異常な激務を、なぜ川口さんは成し遂げることが出来たのでしょう?

聞いてみると、返ってきたのは意外で、なんとも「らしい」返事でした。

川口

最初にも言いましたが、僕自身が本当に『模倣犯』のファンなんです。大の映画好き。だからですかね? 子供みたいなんですが、ちょっとした夢があったんですよ。

『いつの日か模倣犯をハリウッドで映画化して欲しい!やるなら監督は絶対デヴィッド·フィンチャーが良い!』なんていうしょーもない夢が。

川口

あの知的な犯人の描写、だんだんと死体が見つかっていくスリリングでミステリアスな展開…。あれを原作の雰囲気そのままに描けるとしたらデヴィッド·フィンチャーしかいないんじゃないか?

なら、そのための布石としてまずは英語版を出さなきゃヒットさせなきゃ!その礎になれるなら文字通り必死でやってやるー!

…て、ところでしょうかね(笑)

実はプロジェクト推進中にも、様々なシーンで上記の妄想?を語りまくっていたという川口さん。

宮部さん本人をはじめ、事務所の社長や翻訳家の方などと夢と想いを共有したからこそ、前例がないほどのスピードとクオリティで『模倣犯』の英訳·電子書籍版「Puppet Master vol.1 (English Edition)」をリリース出来たのだと語ります。

夢は叶わないから夢なんだ…というそれこそ夢のない格言に正面からケンカを売り、「叶うと信じる人を増やす」という方法で無理無茶なプロジェクトを実現させてしまった。ということでしょうか。

ちょっと格好良すぎる気がしてきました。

「苦労するチャンス」という考え方と「執念」というスタンス

川口

英語が喋れるわけじゃない。海外出版のプロでもない。映画検定3級という微妙なレベルの映画好きで、宮部みゆき作品を読むのが好き…。

それこそどこにでもいるサラリーマンだった僕が、憧れだった宮部さんと一緒に仕事をさせていただく。

なんだかそれこそ夢みたいな感じですね。本当に。

川口

もちろん、色々な方の協力があればこそです。

なんですが、自分に苦労するチャンスをくれたウチならではの風土のおかげもあるのかな…?と、最近は思ったりしています。

無理を承知で突撃アポして、無茶とわかってチェックと進行を根性でやって…。

たった1年半の話ですが、それら全てを支えた「執念」とでも言うべき“前進だけを求めるスタンス”を、ウチの会社の空気の中で学び吸収してきたんだろうな。なんて思うんですよ。

と、ちょっとキレイな感じでまとめてくれた川口さん。

現在、海外でも徐々に好評を得始めている宮部さんの英語翻訳版電子書籍は既に第2巻まで刊行され、さらなるマーケットの拡大を目指し様々なプロジェクトが進行中。

激務の隙間でロンドン出張に向けた英会話レッスンを受講中だという川口さんは、困った表情をしながらも疲れるどころか全力で楽しそうに見えました。

苦労をチャンスと捉え、ただひたすらに子供のような夢を追いかけまくる。どこまでも良い意味で「上場企業らしさ」を持たないクリーク·アンド·リバー社らしいストーリーといえるのかも知れませんね。

もし彼のような仕事がしてみたいとちょっとでも思った方がいたのであれば、ぜひ一度クリーク·アンド·リバー社の説明会へ。

世界で戦うクリエイターと共に、あなたの夢を叶えてみませんか?

編集:中村健太

インタビュアー:大館仁志

ライター:中里福也

カメラマン:佐々木翔太

この会社、ちょっと気になるかも?と思ったら…まずは1分で簡単メアド登録

ANOTHER OFFSTAGE その他の舞台裏をみる

この会社、ちょっと気になるかも?と思ったら…
まずは1分で簡単メアド登録